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Relationships between radiation risk perception and health anxiety, and contribution of mindfulness to alleviating psychological distress after the Fukushima accident : Cross-sectional study using a path model

福島災害後の心理的苦痛に対する放射線リスク認知、健康不安の関連とマインドフルネスによる緩衝効果

要約

本研究は、マインドフルネス※1、健康不安(心気的傾向)※2、放射線リスク認知と心理的苦痛の関連を示すモデルを作成した上で、1. 全般的な健康不安と特異的な(放射線)不安のどちらがより強く心理的苦痛に影響するか、2. マインドフルネスは支援への適用が可能か―の2点を検証しました。これらの心理的苦痛への影響の強さを検証することは、どのような支援を提供することでメンタルヘルスの向上に寄与できるかを明らかにする意義があります。また、マインドフルネスが放射線リスク認知に及ぼす影響について明らかにできます。
オンライン調査会社に調査を依頼し、福島県と東京都に住所を登録している計832人にアンケートによる調査を横断的に実施しました。その後、共分散構造モデルを用いて、各指標間の関連の強さを統計的に評価しました。
その結果、放射線リスク認知からの心理的苦痛に対する影響は小さく、むしろ健康不安がより強く心理的苦痛に影響を与えていることが示されました。また、マインドフルネスは、心理的苦痛に対して強い影響、健康不安に対して中程度に影響することが示されました。一方で、マインドフルネスは放射線リスク認知とは関連していませんでした。
以上の結果から、実際の支援に際しては、放射線不安よりもむしろ全般的な健康不安を支援するほうが、心理的苦痛の軽減に有効であることが考えられ、その方法のひとつとして、マインドフルネスによる支援が有効である可能性が示唆されました。

※1 マインドフルネスとは、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、注意深く気付いている状態」と定義されています。マインドフルネスを組み込んだ心理療法は主に認知行動療法の枠組みで提供されており、うつや慢性的苦痛をはじめとしたさまざまな精神的、
身体的問題に対しての有効性が示されているものです。
※2 健康不安とは、障害や疾病にかかりつつある、あるいはかかるのではないかという強い心配を持つ傾向を指します。

書誌情報

タイトル Relationships between radiation risk perception and health anxiety, and contribution of mindfulness to alleviating psychological distress after the Fukushima accident : Cross-sectional study using a path model
著者

柏崎佑哉1)、竹林由武1)、村上道夫1)
1)福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座

掲載誌 PLoS One. 2020 Jul 6;15(7):e0235517.
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