研究・論文
Influence of post-disaster evacuation on incidence of hyperuricemia in residents of Fukushima Prefecture : the Fukushima Health Management Survey
東日本大震災後の避難が福島県住民における高尿酸血症発症に及ぼす影響:福島県「県民健康調査」
要約
目的:東日本大震災後、東京電力福島第一原子力発電所の近くに住む16万人を超える住民は、原発事故による避難を余儀なくされました。これらの避難者における健康問題は、以来大きな問題となっています。私たちは、福島県民における、避難と高尿酸血症の発生率との関連を調べました。
方法:私たちは災害時に福島にいて高尿酸血症ではなかった40〜90歳の県民に対しコホート調査を行いました。災害前に試験対象基準を満たしていた8,173人の県民のうち4,789人(男性1,971人、女性2,818人;フォローアップの割合:58.6%)に対し、災害後から2013年3月末までのフォローアップ検査を実施しました。日本痛風・核酸代謝学会の委員会がガイドラインで定義した高尿酸血症の発生率を主要な結果として、震災前後の健康診断のデータを用いて解析しました。避難の有無により、参加者を避難、及び非避難グループに分け、結果を比較しました。ロジスティック回帰モデルを使用して、年齢、性別、ウエスト周囲径、運動習慣、及びアルコール摂取等の交絡因子(結果に影響する他の因子)で調整し、高尿酸血症発生のオッズ比を推定しました。
結果:高尿酸血症の発生率は、避難者では男性10.1%、女性1.1%、非避難者では男性7.4%、女性1.0%と、男女とも避難者は非避難者に比べて高い値でした。避難者は非避難者に比べ、震災後に肥満度指数、ウエスト周囲径、中性脂肪、空腹時血糖値、及びHbA1cが高くなっていました。私たちは、避難と高尿酸血症の発生率(調整オッズ比1.38、95% 信頼区間;1.03〜1.86)の間に有意な関連性を見出しました。
結論:東日本大震災後に避難者では非避難者より高尿酸血症が発生しやすいことがわかりました。これは災害後の避難と高尿酸血症の発生率増加の関連を実証した初めての研究です。
書誌情報
タイトル | Influence of post-disaster evacuation on incidence of hyperuricemia in residents of Fukushima Prefecture : the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
橋本重厚1),2)、永井雅人1),3)、大平哲也1),3)、福間慎吾4),5)、細矢光亮1),6)、安村誠司1),7)、佐藤博亮1),8)、鈴木均1),9)、坂井晃1),10)、大津留晶1),11)、川崎幸彦1),6)、高橋敦史1),12)、岡崎可奈子1)、小橋元13)、神谷研二1),14)、山下俊一1),15)、福原俊一5),6)、大戸斉1)、福島県「県民健康調査」グループ |
掲載誌 | Clinical Experimental Nephrology. 2020 Nov;24(11):1025–1032. |
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