研究・論文
The Usefulness of Brief Telephonic Intervention After a Nuclear Crisis : Long-Term Community-Based Support for Fukushima Evacuees
福島第一原子力発電所事故後の電話支援の有用性について ~地域に根ざした長期的な避難者への支援~
要約
背景:2011(平成23)年に起きた東京電力福島第一原子力発電所事故では、10万人を超える人たちが避難をしました。福島県立医科大学では、福島県「県民健康調査」こころの健康度・生活習慣に関する調査の回答結果に基づいて、さまざまなメンタルヘルスや生活習慣病の問題を抱えている人を対象に、「アウトリーチ型」の電話支援を実施しています。そこで、本研究では、支援に対する満足度などについて調査し、電話支援の有用性を明らかにすることを目的としました。
方法:対象者は、2015(平成27)年度こころの健康度・生活習慣に関する調査の16歳以上の回答者のうち、K6(ケスラー6項目精神的苦痛スケールスコア)が15点以上の電話支援対象者で、調査に同意した484名に面接調査を実施しました。そのうち、電話支援を受けた人を「介入群」、電話支援対象者であったが電話がつながらなかった人を「非介入群」とし、介入の有無による対象者の特徴や電話支援の満足度などについて分析を行いました。
結果:介入群は非介入群に比べて、高齢で、無職、精神疾患の既往歴がある人の割合が高いことが明らかになりました。また、電話支援を受けた人の74.6%が、支援に対して高い満足度を示していました。さらに、電話支援の満足度の高さは、電話支援があることを事前に認識していること(OR = 3.00、95%CI:1.59~5.64)、健康関連の実践に関するアドバイスを期待していること(OR = 2.15、95%CI:1.12~4.13)と有意に関連していました。
結論:原発事故のような多くの避難者が広域に避難する大規模災害では、電話を用いた支援は実現可能性が高く、有用性が高い支援方法であると考えられました。
書誌情報
タイトル | The Usefulness of Brief Telephonic Intervention After a Nuclear Crisis : Long-Term Community-Based Support for Fukushima Evacuees |
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著者 |
堀越直子1),2)、前田正治1),3)、岩佐一1),2),4)、桃井真帆1),3)、及川祐一1)、上田由桂5)、柏﨑佑哉6)、音地美穂1)、針金まゆみ1),2)、矢部博興5)、安村誠司1),2) |
掲載誌 | Disaster Medicine and Public Health Preparedness. 2020 Aug 20:1-9. |
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