研究・論文
Nested matched case control study for the Japan Fukushima Health Management Survey's first full-scale (second-round) thyroid examination
本格検査1回目(検査2回目)におけるコホート内症例対照研究:福島県「県民健康調査」
要約
2011年の福島原発事故以来甲状腺超音波検査が行われ、本格検査1回目(先行検査に続く2回目の検査)で甲状腺「悪性または悪性疑い」が71例発見されました。本研究の目的は福島県「県民健康調査」で評価された放射線外部被ばく線量と本格検査1回目における甲状腺がんの発生と関連を明らかにすることです。
対象者は、先行検査受診者と新たに本格検査から対象者になった小児です。年齢、性別、先行検査における検査結果、および検査間隔をマッチングしたコホート内症例対照研究デザイン(各ケースにつき10のコントロール)を用いました。外部放射線を3つの線量レベル:1.3+mSv(上位レベル)、0.8-1.3(中位レベル)、0.0-0.8(参照レベル)とし、3種の検査受診率(一次検査、二次検査、細胞診)の調整に加え既往歴、家族歴、および海鮮の摂食頻度と海藻の摂食頻度で調整した2種のロジスティックモデル1(モデル2)を次の3つの条件、(a)外部被ばく線量が欠損していない対象者のみ。(b1)外部被ばくの欠損値を自治体の測定線量中央値、または(b2)自治体の平均線量で補完した場合で検討しました。
その結果、中位レベル線量群の参照レベル群に対する甲状腺「悪性または悪性疑い」の危険度(オッズ比:OR)は、モデル1では、(a)1.35(0.46-3.94)、(b1)1.55(0.61-3.96)、(b2)1.23 (0.50-3.03)、モデル2では、(a)1.18(0.39-3.57)、(b1)1.31(0.49-3.49)、(b2)1.02(0.40-2.59)でした。上位レベル線量群についても、同様の結果が得られました。既往歴はモデル2の(b1)と(b2)の両方と有意に関連していました(OR= 2.04-2.08)。以上の結果より、本研究では、東京電力(株)福島第一原子力発電所事故後、本格検査1回目で甲状腺「悪性または悪性疑い」が71例発見されましたが、外部放射線被ばく線量と甲状腺がん発生率の間に有意な関連は得られなかったことを明らかにしました。
書誌情報
タイトル | Nested matched case control study for the Japan Fukushima Health Management Survey's first full-scale (second-round) thyroid examination |
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著者 |
高橋秀人1),2)、安村誠司2),3)、髙橋邦彦4)、大平哲也2),5)、大津留晶2),6)、緑川早苗2),6)、鈴木悟2)、志村浩己2),8)、石川徹夫2),9)、坂井晃2),10)、鈴木眞一2),11)、横谷進12)、谷川攻一7)、大戸斉2),神谷研二2),13) |
掲載誌 | Medicine, 2020;99(27):e20440. |
関連リンク |