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こころの健康度・生活習慣に関する調査

Risk Factors for Problem Drinking among Evacuees in Fukushima following the Great East Japan Earthquake : The Fukushima Health Management Survey

東日本大震災後の避難住民における問題飲酒になる要因2年間のコホート研究: 福島県「県民健康調査」

要約

目的:先行研究では、震災後における問題飲酒と精神健康に関連があると報告されています。しかし、震災後、どのような危険因子が問題飲酒の発展に関連するかについては明らかではありません。本研究は、東日本大震災後の慢性時期に、避難住民が問題飲酒になる社会心理的要因及び、生活習慣を男女別に明らかにしました。

方法:東日本大震災後に避難指示区域になった13市町村の避難住民に「こころの健康度・生活習慣に関する調査票」を送付しました。本研究の対象者は、調査票を送付した2012年、2013年ともに回答した20歳以上の22,774人としました。その対象者のうち、自身で調査票を回答しておらず、かつアルコール依存症尺度(CAGE)が無回答者を除外したため、本研究のデータ分析対象者は12,490人となりました。性別、年齢階級、健康状態、運動状態、生活習慣病関連、精神科既往歴、睡眠状態、笑い、仕事の変化の有無、経済状態、精神健康度(K6)、トラウマ反応(PCL)、社会的孤立(LSN-6)、飲酒量を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い、問題飲酒と有意な関連を持つ要因を明らかにしました。

結果:男女共に、睡眠問題と4ドリンク以上の多量飲酒は、2012年から2013年の問題飲酒になる要因でした。男性の避難住民においては、家計の悪化、トラウマ反応(PCL)が問題飲酒になる危険因子であることがわかりました。一方で、女性の避難住民においては、過去の精神科既往歴が、問題飲酒につながる要因でした。

結論:本研究では、震災後の慢性期に問題飲酒につながる危険因子には男女の差があることが分かりました。男性では、震災後の家計の悪化、トラウマ反応(PCL)が高値であることが問題飲酒の危険因子になることが示唆されました。一方で、女性の避難住民では、精神科既往の有無が問題飲酒の構築の要因であることが考えられました。したがって、本研究の結果から、複合震災後には、問題飲酒になる性差の違いを配慮した避難住民特有の防止対策を開発する必要があると思われます。

倫理的配慮:本研究は、福島県立医科大学倫理委員会の承認を得て実施されました。

書誌情報

タイトル Risk Factors for Problem Drinking among Evacuees in Fukushima following the Great East Japan Earthquake : The Fukushima Health Management Survey
著者

上田由桂1),2)、村上道夫3),4)、前田正治4),5)、矢部博興1),4)、鈴木友理子6),7)、大類正嗣7)、安村誠司4),7)、大平哲也2),4)
1)福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、2)福島県立医科大学医学部疫学講座、3)福島県立医科大学医学部健康コミュニケーション学講座、4)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、5)福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、6)国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所、7)福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座

掲載誌 Tohoku J Exp Med. 2019;248(4):239-252.
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