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甲状腺検査

Factors influencing the proportion of non-examinees in the Fukushima Health Management Survey for childhood and adolescent thyroid cancer : Results from the baseline survey

福島県「県民健康調査」甲状腺検査での未受診に影響する要因:先行検査の結果

要約

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故後、小児の甲状腺がんの発生が懸念されるため、子どもたちの甲状腺の状態を把握し、健康を長期に見守ることを目的に甲状腺検査が実施されています。2011~2015年には、その後の甲状腺の状態の評価を行うための基準(ベースライン)を確立するための先行検査が実施されました。この検査では超音波検査による1次検査を行い、その結果に基づき、診断基準に該当する人にはより詳細な二次検査が実施され、最終的な診断結果が判定されます。本研究では先行検査の受診・未受診に関連する要因について検討を行いました。
2011年3月11日に福島県に居住していた359,200人について分析を行ったところ、一次検査を受診しなかった人(検査結果の提供に同意しなかった人を含む)は64,117人(17.8%)でした。多重ロジスティック回帰分析を用いてオッズ比(起こりやすさの比較指標)を計算すると、男子に比べて女子の方が未受診割合が低い結果でした(0.8倍)。また震災時の年齢別にみると、6~10歳で受診率が一番高く、0~5歳、11~15歳、16歳以上の順で受診率が低くなっていました。さらに震災時居住地が県西部の人の未受診割合が特に高く、さらに震災後に震災時居住市町村から他の市町村に転居した人は、同じ市町村に居住している人に比べて未受診の割合が高くなっていました。
一次検査の結果に基づく二次検査対象者は2,246人であり、そのうち二次検査を受診しなかった人は194人(8.6%)でした。二次検査において男女別の未受診割合には統計的な有意差は認められませんでしたが、16歳以上の人、震災時居住地が県中・会津地方の人の未受診割合が高い傾向がみられました。
検査の未受診に影響する要因は他にも存在する可能性がありますが、本研究では福島県「県民健康調査」で得られたデータの中で要因を探索しました。県民健康調査の結果を解釈する場合や、今後の調査を実施するにあたっては、本研究で得られたような未受診者の特性を考慮して検討する必要があることが示唆されます。

書誌情報

タイトル Factors influencing the proportion of non-examinees in the Fukushima Health Management Survey for childhood and adolescent thyroid cancer : Results from the baseline survey
著者

髙橋邦彦1)、高橋秀人2),3)、中谷友樹4)、安村誠司3),5)、大平哲也3),6)、大戸 斉3)、大津留晶3),7)、緑川早苗3),7)、鈴木眞一3),8)、志村浩己3),9)、山下俊一10),11),12)、谷川攻一3)、神谷研二3),13)
1)名古屋大学大学院医学系研究科臨床医薬学講座生物統計学分野、2)国立保健医療科学院、3)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、4)東北大学大学院環境科学研究科、5)福島県立医科大学公衆衛生学講座、6)福島県立医科大学医学部疫学講座、7)福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、8)福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座、9)福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座、10)福島県立医科大学、11)長崎大学、12)量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門 高度被ばく医療センター、13)広島大学原爆放射線医科学研究所

掲載誌 J Epidemiol. 2020 Jul 7;30(7):301-308.
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