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妊産婦に関する調査

The effect of the Great East Japan Earthquake on hypertensive disorders during pregnancy : a study from the Fukushima Health Management Survey

東日本大震災が妊娠高血圧症候群発症に与えた影響

要約

妊娠高血圧症候群は妊娠全体の約2%から3%に発症し、母児ともに生命にかかわる重大な症状を起こすことがあります。妊娠高血圧症候群の発症の原因やメカニズムには不明な点が多いとされていますが、妊娠中の過度な心身のストレスがその発症に影響を与えうるとされています。
今回われわれは、東日本大震災が妊娠高血圧症候群の発症に影響を与えたかどうかについて、調べました。震災が発生した2011年3月11日の妊娠週数から、妊婦を1)妊娠第一期(妊娠12週未満)、2)妊娠第二期(妊娠13-27週)、3)妊娠第三期(妊娠28週以降)、4)妊娠前の4群に分けました。また、妊婦の所在地によりa)浜通り、b)中通り、c)会津地区の3グループに分けました。
結果として、妊娠高血圧症候群や早産、低出生体重児の発症率は同時期に行われた疫学調査と大きな変わりはありませんでした。浜通りにおいて、震災後妊娠した妊婦を基準とすると、妊娠第一期に震災に遭った場合は2.6倍、妊娠第三期も2.6倍の妊娠高血圧症候群の発症リスクとなることが分かりました。中通りでは、妊娠第三期における妊娠高血圧症候群の発症リスクは、震災後妊娠した場合と比較して、1.9倍上昇することが分かりました。直接的な被害が比較的少なかったとされる会津地区では、妊娠時期による妊娠高血圧症候群の発症リスクに変化はありませんでした。
東日本大震災時に妊娠第三期である妊婦は、妊娠高血圧症候群の発症リスクが上がる可能性が示唆されました。精神的なストレスが血圧上昇に関与した可能性があります。今後、同様の大規模災害の場合、特に妊婦は妊娠高血圧症候群のリスクが上昇する可能性があることを、周産期医療関係者は心得ておいた方が良いかもしれません。

書誌情報

タイトル The effect of the Great East Japan Earthquake on hypertensive disorders during pregnancy : a study from the Fukushima Health Management Survey
著者

経塚標1),2)、村田強志1)、安田俊1),2)、藤森敬也1),2)、後藤あや2),3)、安村誠司2),3)、阿部正文2)
1)福島県立医科大学医学部産科婦人科学講座、2)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、3)福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座

掲載誌 J Matern Fetal Neonatal Med. 2019 Apr 1:1-6.
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