研究・論文
東日本大震災による妊産婦の避難生活とうつ傾向に関する検討
東日本大震災による妊産婦の避難生活とうつ傾向に関する検討
要約
目的:2011年3月11日に発生した東日本大震災、および東京電力福島第一原子力発電所事故による福島県の避難者は、2012年3月時点で約16万人に上りました。その後徐々に減少したものの、 2018年4月現在でも約5万人が避難生活を続けています。本研究は、妊産婦の避難生活の実態とうつ傾向との関連を明らかにし、支援に関する示唆を得ることを目的としました。
対象と方法:2011年8月1日から2012年7月31日までに福島県内で母子健康手帳を交付された方、または福島県内で妊婦健診を受診し分娩した1万4,516人に対し、2012年度福島県「県民健康調査」妊産婦に関する調査の自記式調査票を郵送。回答が得られた7,181人(49.5%)のうち、人工を含む流産・死産、県外で母子健康手帳の交付を受けた里帰り分娩者、無効回答を除く6,925名を対象としました。
結果:対象者の平均出産時年齢は30.4±5.0歳で、うち初産は47.6%であった。家族構成は核家族が65.1%で、「現在避難中」が7.7%、「避難経験ありで現在は自宅」が38.9%であった。「避難区域内」の母親は「避難区域外」の母親に比べて、うつ傾向が有意に高く、「現在も避難中」の母親は、「避難なし」の母親と比べてうつ傾向が有意に高いという結果でした。さらに、現在避難中で家族と別居をしており、家族とコミュニケーションがとれていると回答しなかった母親にうつ傾向が高いこと、特に核家族において、コミュニケーションがとれていると回答しなかった母親にうつ傾向が有意に高いことが分かりました。
結論 :難経験の有無よりも、現在避難中であるかどうかが母親の精神状況において重要であることから、避難区域内の母親や避難中の母親に対して、より精神的な支援が必要であること、また、現在避難中、特に核家族で避難中の母親に対し、家族やパートナーとのコミュニケーションが取れるように、細やかな支援が必要であることが示唆されました。
書誌情報
タイトル | 東日本大震災による妊産婦の避難生活とうつ傾向に関する検討 |
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著者 |
太田操1)、服部桜2)、新井昌子2)、清水川由美子2)、石井佳世子3)、後藤あや4)、安村誠司5)、藤森敬也6) |
掲載誌 | 日本母子看護学会誌 12巻2号 (2019年2月) |
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