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こころの健康度・生活習慣に関する調査

Changes in risk perception of the health effects of radiation and mental health status : The Fukushima Health Management Survey

放射線の健康影響のリスク認知と精神健康の変化:福島県「県民健康調査」

要約

東京電力福島第一原子力発電所事故後、多くの避難者は、精神健康が良くなく、放射線の健康影響に対してリスクが高いと考えている、と報告されています。しかし、この精神健康状態と放射線のリスク認知の時間的関係に関する検討は行われていませんでした。そこで、福島県「県民健康管理調査」のデータを用いて、事故以来の放射線のリスク認知の変化について検討し、このリスク認知の変化に、精神健康状態がどのように影響しているかを統計的に調べました。2種類のリスク認知について調べ、ひとつはがんなどの長期的な健康影響に対する考え方(晩発影響)、そして将来の子どもや孫への健康影響に対する考え方(遺伝的影響)について検討しました。
災害から3年間(2011年から2013年)、一貫して放射線の健康影響のリスクは高いと認識し続けている、あるいは低いと認識し続けている、というパターンが明らかになりました(晩発影響については、約60%がリスクは低いと認識し続け、遺伝的影響については、約50%がリスクは高いと認識し続けていました)。
調査では、トラウマ反応として、災害のことを思い出すと非常に動揺する、心臓がドキドキするなど、体が反応してしまう、といったことを質問しました。このPTSD(心的外傷後ストレス障害)チェックリストで、50点以上のトラウマ反応が強かった方では、健康影響のリスクは高いと認識し続けていた方が多いということが分かりました(晩発影響、遺伝的影響両方とも)。震災1年後にトラウマ反応が強かった方では、特にそのような影響が強く出ていて、トラウマ反応がそれほど強くなかった方に比べると、2倍以上の方は健康影響のリスクが高いと考えていました。
災害から間もない時期のトラウマ反応がその後3年間の放射線のリスク認知のパターンに影響を与えていることが分かったことから、特にこの時期の精神保健上の対応やコミュニケーションのあり方について考慮する必要があります。

書誌情報

タイトル 「International Journal of Environmental Research and Public Health」(2018年)
著者

鈴木友理子1)、竹林由武2)、安村誠司3)、村上道夫2)、針金まゆみ4)、矢部博興5)、大平哲也6)、大津留晶7)、中島聡美8)、前田正治8)
1)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 精神医療政策研究部、2)福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座、3)福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、4)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、5)福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、6)福島県立医科大学医学部疫学講座、7)福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、8)福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座

DOI International Journal of Environmental Research and Public Health. 2018 Jun;15(6): E1219.
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