研究・論文

  • ホーム
  • 研究・論文
  • Associations of disaster-related and psychosocial factors with changes in smoking status after a disaster : a cross-sectional survey after the Great East Japan Earthquake
こころの健康度・生活習慣に関する調査

Associations of disaster-related and psychosocial factors with changes in smoking status after a disaster : a cross-sectional survey after the Great East Japan Earthquake

東日本大震災における震災・避難経験に起因する社会環境因子と喫煙状況の関連: 福島県「県民健康調査」から

要約

この研究は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故によって、避難を余儀なくされた住民を対象に実施された福島県「県民健康調査」の詳細調査「こころの健康度・生活習慣に関する調査」のデータを用いて、避難経験に起因する社会心理環境因子と喫煙状況との関連について明らかにしたものです。
結果として、日本版PTSD(心的外傷後ストレス障害)チェックリスト特定版(PCL-S)により把握された避難や喪失体験によるトラウマ反応、及びケスラー6項目心理的苦痛スケール(K6)により把握された精神的苦痛と喫煙状況の変化を分析したところ、喫煙の開始には精神疾患既往、仮設住宅等の居住、被災体験、仕事の変化、失業、トラウマ反応、及び精神的苦痛が促進要因となることが示されました。
一方で、禁煙の開始には、短大以上の学歴が禁煙を促進する要因となることが示されました。喫煙行動の抑制には従来の禁煙治療にとどまらず、避難者への社会的・心理的なサポートの必要性が示唆されました。
また、震災後に喫煙を開始した人よりも、震災後に禁煙を開始した人の割合が高い結果が示されました。これは、東日本大震災によるたばこ会社の被災や物流の停滞により、たばこ製品そのものの入手が困難になったことが影響を及ぼしている可能性があります。
この研究は、大規模複合災害が喫煙状況に与える影響について分析した国内外でも数少ない研究です。

書誌情報

タイトル Associations of disaster-related and psychosocial factors with changes in smoking status after a disaster : a cross-sectional survey after the Great East Japan Earthquake
著者

中野裕紀1),2)、大平哲也1),2)、前田正治2),3)、矢部博興4)、大津留晶5)、鈴木友理子6)、針金まゆみ2)、堀越直子2)、永井雅人1),2),7),8)、章ぶん1)、高橋秀人2)、安村誠司9)、磯博康10)、神谷研二2)
1)福島県立医科大学医学部疫学講座、2)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、3)福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、4)福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、5)福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、6)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、7)東北大学東北メディカルメガバンク機構、8)東北大学大学院医学系研究科、9)福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、10)大阪大学医学部公衆衛生学

掲載誌 BMJ Open. 2018 Jun 30;8(6):e018943.
関連リンク