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甲状腺検査

Findings of thyroid ultrasound examination within three years after the Fukushima Nuclear Power Plant accident: The Fukushima Health Management Survey

福島県原子力発電所事故後3年以内に行われた甲状腺検査の検査結果

要約

背景:東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故後、福島県では放射線被ばくによる健康被害の心配がありました。これに対応するため、現在、震災時18歳以下の福島県民を対象に、福島県「県民健康調査」甲状腺検査が行われています。その一巡目の検査となった先行検査は、甲状腺に対する放射線被ばくの影響を受けないと考えられている期間内に行われた検査で、今後の甲状腺検査の結果を評価する上でベースラインとなると考えられています。先行検査のうち、事故後ほぼ3年以内である2013年度までに実施された検査の結果を集計し、甲状腺嚢胞(のうほう)と結節、細胞診で悪性ないし悪性疑いとされた結節の性別、年齢階級別特徴を解析しました。

方法:2011年10月から2014年3月までに一次検査を受けた294,905名(男性:148,830名、女性:146,075名、0-21歳)を対象とし、性別、年齢階級別の各所見発見率、最大径中央値等を解析しました。

結果:甲状腺嚢胞の発見率は男性45.7%、女性50.0%であり、わずかながら有意に女性の発見率が高かったことが分かりました。年齢階級別では、10歳までは年齢とともに増加傾向が認められ、11-12歳で最大となりました。嚢胞のうち、多発嚢胞が認められた割合は男性で89.3%、女性で89.6%であり、この割合は6歳までは上昇傾向が認められましたが、7歳以降はほぼ一定でした。 甲状腺結節の発見率は男性1.0%、女性1.7%であり、女性においてより多く認めました。年齢による発見率の上昇傾向は、女性において10歳以上、男性において14歳以上で認められ、性差は10歳以上の年齢層で顕著でした。結節が認められた受診者のうち、多発結節が認められた割合は男性13.0%、女性15.0%で、7歳以上では10%以上でほぼ一定でした。
結節の最大径を5.0mm以下、5.1~10.0mm、10.1~20.0mm、20.1mm以上に分けた場合、10歳未満では5.0mm以下の頻度が最も高かったものの、10歳以上では5.1~10.0mmの結節の頻度が最も高かったことが分かりました。すべての群において,年齢とともに頻度の上昇が認められました。
二次検査の結果、112名(男性:38名、女性:74名)が細胞診で悪性ないし悪性疑いとなりました。男性では13歳以降、女性では8歳以降で年齢とともに発見率の上昇傾向が認められました。悪性ないし悪性疑いの結節の最大径を5.1~10.0mm、10.1~20.0mm、20.1mm以上に分類し、男女合わせた頻度を検討した結果、10.1~20.0mmの頻度が10歳以上において最も高かったことが分かりました。

結論:小児、若年者の甲状腺嚢胞、結節、および甲状腺がんの疫学的特徴が明らかになりました。これらの結果は今後の甲状腺検査の結果解析の基礎となりえるものです。小児、若年者の結節性病変の診療にも資するものと考えられます。

書誌情報

タイトル Findings of thyroid ultrasound examination within three years after the Fukushima Nuclear Power Plant accident: The Fukushima Health Management Survey
著者

志村浩己1),2)、祖父江友孝3)、高橋秀人1)、安村誠司1),4)、大平哲也1),5)、大津留晶1),6)、緑川早苗1),6)、鈴木悟1)、福島俊彦7)、鈴木眞一7)、山下俊一1),8)、大戸斉1)
1)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2)福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座、 3)大阪大学大学院医学系研究科・医学部社会医学講座環境医学、4)福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、5)福島県立医科大学医学部疫学講座、6)福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、7)福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座、8)長崎大学原爆後障害医療研究所

掲載誌 J Clin Endocrinol Metab, 2018, 103(3):861–869.
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