研究・論文

基本調査

An overview of internal dose estimation using whole-body counters in Fukushima Prefecture

福島県におけるホールボディカウンタを用いた内部被ばく線量評価の概要

要約

東日本大震災に続発した福島第一原発事故は、福島県内の土壌を放出された放射性物質で汚染しました。実測された放射性セシウムの土壌濃度分布にチェルノブイリ事故で得られた知見をそのままあてはめると、福島県県内の人口密集地で、年に数mSvを超える内部被ばくが頻出することが懸念されました。
被ばくのリスクを評価するためには、個人が受ける実効線量を推測する必要があります。ホールボディカウンタは体内残留放射能を測定する体外計測器で、得られた残留量から預託実効線量を推測することが出来ます。現時点で50台以上のホールボディカウンタが福島県内の様々な場所に配備されています。2011年6月以降多くの機関で計測が行われてきましたが、1mSvより小さい単位での線量分布は公表されていない場合が多いです。福島県の発表によると2013年9月現在で156,858人の測定が行われ、156,832人が1mSv未満と発表されています。セシウム137の慢性経口摂取による成人の内部被ばくの場合、年間1mSvは体内残留放射能として30,000Bq/ 全身、日常摂取量として1日約210Bqに相当します。セシウムが検出されなかった住民についても1mSv未満と分類して公表されるため、一概に1mSv未満といっても実際に福島県住民がどの程度放射性セシウムを摂取しているかの実態は把握しにくい状況がありました。
独立行政法人日本原子力研究開発機構で2011年7月から2012年1月に行った9,927人のホールボディカウンタ検査結果は、放射性セシウムの初期吸入摂取による推定で80%が検出限界以下、有意検出者のほとんどが0.3mSv以下であることを示しました。また、ひらた中央病院で2011年10月から2012年11月に行った32,811人のホールボディカウンタ検査結果は、慢性期経口摂取による住民の内部被ばくが、予想よりも遙かに低いことを明らかにしました。これらの結果は、福島県全県を代表するものではありませんが、福島県や、県内自治体でこれまでに得られた結果等と矛盾しません。
福島県に住むから内部被ばくをするのではなく、どういった食生活が内部被ばくの原因になるのかを知ることは、自らが被ばくをコントロールできる感覚に繋がります。ホールボディカウンタによる検査がその一助になるためには、検査を受けた住民にしっかりとした説明を行うこと、これら結果の集積と解析を行い継続的かつ合理的な検査を行うことが必要であると考えられます。

書誌情報

タイトル An overview of internal dose estimation using whole-body counters in Fukushima Prefecture
著者

宮崎真1)、大津留晶1)、石川徹夫1),2)
1)福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、2)福島県立医科大学医学部放射線物理化学講座

掲載誌 Fukushima Journal of Medical Science. 2014;60(1):95-100.
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