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こころの健康度・生活習慣に関する調査

The Relationship between Starting to Drink and Psychological Distress, Sleep Disturbance after the Great East Japan Earthquake and Nuclear Disaster : The Fukushima Health Management Survey

東日本大震災および放射線災害後に新たに開始した飲酒行動と精神的な苦痛と睡眠障害との関連:福島県「県民健康調査」

要約

目的:大規模災害後に新たに飲酒を開始することは、精神的苦痛や社会経済的要因が影響していることが考えられ、被災者支援を行う上での重要な知見になりえます。今回、東日本大震災後、被災された方のうち、新たに飲酒行動を開始した心理的・社会経済要因との関連を、震災後の2012年および2013年に行われた県民健康調査の調査結果を基に検討しました。

方法:2012、2013年に実施した県民健康調査に回答し、震災前に飲酒習慣がないと回答した20歳以上(震災時)の3万7,687人を対象に、震災後に新たに飲酒を開始した(新規飲酒開始)群と、継続して飲酒していない群を比較し、2012年時点での心理状態や睡眠満足度、震災経験、放射線被ばくによる健康影響不安、震災による失業、多量飲酒(1回2合(日本酒換算)以上の飲酒)といった要因との関連を検討しました。また、2012年調査時点で新たに飲酒行動を開始した群のうち、2013年の調査時点で、引き続き飲酒行動を継続している群の関連する要因も併せて同様に検討しました。

結果:震災後に新たに飲酒行動を開始した割合は、3,569名(9.6%)で、うち656名(18.4%)が多量飲酒者でした。震災後新たに飲酒行動を開始した群で2013年の調査時点で飲酒行動が継続していたのは、953名(53.8%)で、うち227名(28.8%)が多量飲酒者でした。次いで、震災後新たに飲酒行動を開始した関連要因としては、男性、青壮年者、睡眠に不満足、精神的苦痛がある、津波・原子力発電所事故を経験した、放射線被ばくによる健康不安がある、が統計学的に有意な関連がありました。また、震災後新たに飲酒行動を開始した群のうち、翌年まで継続する要因としては、精神的苦痛がある、前年度調査で多量飲酒者であったことが統計学的に有意に飲酒行動を継続しやすくなっていました。

考察:震災後比較的早い段階では睡眠が不満足、精神的苦痛がある、震災経験がある、放射線被ばくによる健康不安がある群において、新たに飲酒行動を開始しやすく、そのような精神的な不調や睡眠状況を自分で改善するためにアルコールを使用していた可能性がありました。したがって、新たに飲酒行動を開始していることは、精神的苦痛や睡眠が十分とれないことが考えられるため、被災された方の身体的、精神面でのケア活動を行う際の重要な支援開始の判断材料になることが考えられました。また、震災から2年経過した段階では、多量飲酒者が飲酒行動を継続しやすいことからも、多量飲酒になっている方に関しては、早期に介入して適正飲酒を心がけるよう支援していく必要性が示唆されました。

書誌情報

タイトル The Relationship between Starting to Drink and Psychological Distress, Sleep Disturbance after the Great East Japan Earthquake and Nuclear Disaster : The Fukushima Health Management Surveyronmental Research and Public Health」(2017)
著者

大類真嗣1)、上田由桂2)、鈴木友理子1),3)、前田正治4),6)、大平哲也2),6)、矢部博興5),6)、安村誠司1),6)
1)福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、2)福島県立医科大学医学部疫学講座、3)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所成人精神保健部、4)福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、5)福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、6)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター

掲載誌 Int'l Journal of Environmental Research & Public Health. 2017 Oct 24;14(10).
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