研究・論文
The Features of Childhood and Adolescent Thyroid Cancer After the Fukushima Nuclear Power Plant Accident
福島原発事故後の小児若年者甲状腺がんの特徴
要約
2011年3月11日に東日本大震災に伴う大津波により東京電力福島第一原子力発電所に事故が発生し、福島県民は事故による放射線の低線量被ばくによる健康影響の問題に直面しました。それに伴い、事故当時18歳以下の福島県民に対し、大規模な甲状腺超音波検査が開始されました。 1巡目の健診では、2016年3月31日までに300,476名(対象者の81.7%)が一次検査を受診し、2巡目の健診では、同じく2016年3月31日までに267,769名が一次検査を受診しました。そのうち、1巡目では2,294名が、2巡目では2,061名が要精査となり、二次検査を受診しました。その結果、1巡目では116名、2巡目では57名の計173名が穿刺吸引細胞診で、悪性ないし悪性疑いと診断されました。そのうちの125名が福島県立医科大学で手術を施行し、術後病理診断によって甲状腺癌と確定されました。そのうち121例が甲状腺乳頭癌、3例が甲状腺低分化癌、1例がその他の甲状腺癌でした *。125例の甲状腺癌の診断時の平均年齢は17.8歳、平均腫瘍径は14mmでした。術後のリンパ節転移、甲状腺外浸潤、肺転移は77.6%、39.2%、2.4%でした。術式としては甲状腺全摘が8.8%、片葉切除が91.2%と、大半が片葉切除でした。重篤な術後合併はありませんでした。
震災後の福島県での甲状腺がんの発見率の増加は、大規模で精度の高い超音波検査を行ったことによるスクリーニング効果によるものと思われ、放射線被ばくによる直接の因果関係は現時点では認められていません。現在まで得られた知見からは、発見された甲状腺がんが、現時点では原発事故による放射線の影響とは考えにくいといえます。原因とは現時点ではいえません。しかしながら、今後も、放射線の影響によって甲状腺がん発生のリスクが増加するのかどうかを見守るためにも、長期にわたる甲状腺超音波検査を行うべきと考えます。
*その後本論文掲載後、甲状腺癌取扱規約第7版の改訂に伴い、低分化癌の3例中2例は乳頭癌と変更されています。
書誌情報
タイトル | The Features of Childhood and Adolescent Thyroid Cancer After the Fukushima Nuclear Power Plant Accident |
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著者 |
鈴木眞一(福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座) |
掲載誌 | Thyroid Cancer and Nuclear Accidents 1st Edition, Long-Term Aftereffects of Chernobyl and Fukushima; Chapter15 155-163, Shunichi Yamashita, Gerry Thomas editors, ELSEVIER, 2017. |
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