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こころの健康度・生活習慣に関する調査

Lifestyle-related factors that explain disaster-induced changes in socioeconomic status and poor subjective health : a cross-sectional study from the Fukushima Health Management Survey

震災に伴う社会経済状況の変化と主観的健康観悪化の関連を説明する 生活習慣の要因について:福島県「県民健康調査」

要約

社会経済状況や生活習慣は主観的健康観と関連することが示されています。しかし、災害時において社会経済状況の変化は避けられない一方、生活習慣は修正可能な要因です。そこで、本研究の目的は、震災に伴う社会経済状況の変化が主観的健康観に与える負の影響を弱める生活習慣の要因を、横断的な研究により検討することです。
解析対象者は福島第一原子力発電所事故によって、避難区域に指定された地域に居住していた20~64歳の男女33,350人です。災害に伴う社会経済状況の変化は住居形態と労働状況から定義しました。交絡因子を調整したモデルをモデル1、中間媒介変数として生活習慣の要因も調整したモデルをモデル2とし、ポアソン回帰分析を用いて、社会経済状況が変化しなかった群に対する変化した群(失業、減収、または避難所、仮設住宅、借家 / アパートに居住)の悪い主観的健康観の有病率比を算出しました。また、生活習慣によって説明される超過リスクの割合は、「((モデル1の有病率比 – モデル2の有病率比)/(モデル1の有病率比 –1)) × 100」より算出しました。
災害に伴う社会経済状況の変化は悪い主観的健康観と有意に関連していました。災害に伴い社会経済状況が変化した群のモデル1の有病率比(95%信頼区間)は男性で2.02(1.81–2.24)、女性で1.80(1.65–1.97)でした。モデル2で生活習慣を調整すると有病率比は男女それぞれ45.1%、46.3%低下し、有病率比が1.56(1.40–1.73)、1.43(1.31–1.55)となりました。特に睡眠満足度とレクリエーション活動や地域の仕事への参加がこの低下に寄与しており、災害に伴う社会経済状況の変化と、悪い主観的健康観の関連がそれぞれ男性で37.3%、17.6%、女性で41.3%、11.3%弱まりました。
災害時に被災者の社会経済状況の変化は避けられませんが、社会経済状況の変化が主観的健康観に与える負の影響を修正可能な生活習慣の要因によって軽減できる可能性が示唆されました。

書誌情報

タイトル Lifestyle-related factors that explain disaster-induced changes in socioeconomic status and poor subjective health : a cross-sectional study from the Fukushima Health Management Survey
著者

永井雅人1),2)、大平哲也1),2)、章ぶん2)、中野裕紀1),2)、前田正治1),3)、安村誠司4)、阿部正文1)
1)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2)福島県立医科大学医学部疫学講座、3)福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、4)福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座

掲載誌 BMC Public Health. 2017 Apr 20;17(1):340.
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